2011年6月3日金曜日
放射能の影響で女児の出生数が減少?
2006年、チェルノブイリ近郊で原子力安全訓練を受けるウクライナの子どもたち。
Photograph by Sergey Ponomarev, AP
核実験や原発事故で放出された放射線が、男児の出生率をわずかに上昇させている可能性がある。最新の研究によると、チェルノブイリのように地上で発生した事象については、影響は局地的なものにとどまっているが、大気圏での核爆発は、全世界の男女出生比率に影響を及ぼしていることが明らかになったという。
その結果、女児は本来の予想より数百万人少ない出生数にとどまっていると推定される。そして現在、日本で発生している原発事故によって、また新たに男児の出生率が上昇するかもしれないと専門家は指摘している。
研究では、1975~2007年におけるヨーロッパ39ヵ国およびアメリカの人口データを分析した。その結果、1964~1975年にかけてはすべての国で、また、1986年以降の数年間では東ヨーロッパ諸国の多くで、男児の出生数が女児に比べて増加していることが明らかになった。
“通常”の環境でも、105:100の比率で男児は女児より多く生まれると、研究共著者のハーゲン・シェルプ(Hagen Scherb)氏は話す。「このような比率になる生物学的な理由はわかっていない。万有引力定数と同じ、自然の定数だ」。シェルプ氏は生物統計学者で、ミュンヘンにあるドイツ研究センターヘルムホルツ協会の環境健康研究センターに所属している。
統計データから判明した男児出生数の増加は、このわずかな自然の偏りをさらに助長するものだ。
研究では、1960~1970年代に男児が増加した原因として、大気圏内での核実験により放射性原子が地球規模で拡散したことを挙げている。核実験によって放射性原子は大気圏の高層まで上昇し、そこで気流に乗って地球全体に拡散した。
大気中での核実験は、1940年代末から1963年にかけて最もさかんに行われたが、1963年の部分的核実験禁止条約によって、少なくとも条約の調印国であるアメリカ、ソビエト連邦、イギリスにおいては、それ以降、核実験は地下で行われることになった。 Chernobyl's Hidden Fallout? データではその後も再び男児出生数が増加しているが、これは1986年に、当時ソ連の一部だったウクライナで原子炉が爆発したチェルノブイリ原発事故の影響だと研究は推測している。
しかし、チェルノブイリのケースでは、影響はより局地的なものにとどまった。放射性物質の放出が地上で起こったためだ。「チェルノブイリに近い国ほど、影響が強く出ている」とシェルプ氏は言う。
例えば、ウクライナと国境を接するベラルーシでは、2000キロあまり離れたフランスよりも、女児に対する男児の出生数が多かった。
アメリカではチェルノブイリの影響はみられなかったが、これはおそらく距離が遠すぎて、影響が出るほど多量の放射性原子が到達しなかったためだろうとシェルプ氏は述べている。
核実験とチェルノブイリのいずれのケースでも、男児の出生比率増加はわずかなもので、1%にも満たない。
しかし研究によると、それほどわずかな増加率であっても、世界中で放出された放射線の影響によって、この数十年間に全世界で誕生した女児の数は、本来の予想より数百万人減っている計算になるという。ベルリンにある遺伝医学・人類遺伝学研究所の遺伝学者カール・シュペルリンク(Karl Sperling)氏は、今回の研究には参加していないが電子メールで次のように述べている。「科学界にとって、シェルプ博士による今回の研究成果はまったく予想外のものだったが、統計的には十分に証明されている」。
今回の研究成果は、主に冷戦時代の統計データに基づくものだが、今現在のことにも関連しているとシェルプ氏は話す。
福島第一原子力発電所の事故で放出された放射線の影響によって、今後再び、ヒトの男女出生比率に偏りが生じる可能性があるというのだ。「福島から放出された放射線の量は定かでなく、またそれが今後、全世界にどのように拡散するのかも不明だ」とシェルプ氏は述べている。
「影響が出たとしても、おそらくは日本国内にとどまるだろう。しかし、水や空気を通じて拡散すれば、特にアメリカ西海岸で同様の影響が生じる可能性もある」。
研究の詳細は、「Environmental Science and Pollution Research」誌の6月号で発表された。
Ker Than for National Geographic News June 3, 2011 (引用)
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110603003&expand
汚染水処理に対する日本の対応を見ていると、米国だけでなく世界中に損害賠償請求をしてくださいと言わんばかりの杜撰な状況だ。汚染を食い止める名案が思い浮かばないのだが、どなたかご存知だろうか?
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