2011年6月14日火曜日

「おいしい」核燃料税

敦賀市樫曲の山あいに広がる中池見湿地(約25ヘクタール)。多様な動植物が生息し、重要湿地とその生態系を保護する「ラムサール条約」への登録を目指す市民運動も展開されている。市も整備事業に乗り出しており、2008~10年度に自然観察用木道の改修などを行う。貴重な自然遺産を守る事業の原資が、実は<原発マネー>だ。3年間の総事業費約8200万円は、県から受け取る「核燃料税」で賄われる。

 この税金は、原発の炉心へ入れる核燃料に対して県が課税する法定外普通税。1976年、県が全国の原発立地自治体に先駆けて導入した。現在の税率は燃料価格の12%で、ここ数年の税収は年間40~60億円。うち4割を地元や周辺の市町などに配分している。08年度までの税収総額は約459億2000万円に上る。

 ある県幹部は「実のところ、こんなにおいしい税収はない」と漏らす。原発が稼働し続ける限り燃料は消費されるため、県は半永久的に巨額の収入を得る。まるで、打てば打つだけ好きな物が手に入る「打ち出の小づち」のようだ。

 最大のメリットは、税収がどれほど大きくても、国の地方交付税交付金を減らされる心配がない点。県税務課長の土田栄作(57)は「一般の税収と比べ、4倍の財政効果がある」と解説する。

 この交付金は自治体の財源不足を補うのが目的なので、通常の県税の場合、増収があると、その75%にあたる額の交付金が減らされる。たとえば100億円の増収なら、〈ごほうび〉として県の取り分になるのは4分の1の25億円だけ。一方、核燃料税だと、100億円がまるまる入る。

 だが、良いことずくめではない。「トラブルで長期停止すれば、税収はその間ストップしてしまう」(四国電力伊方原発のある愛媛県税務課)という指摘のように、安定収入につながらない側面もある。

 懸念が現実化したのが、07年7月の新潟県中越沖地震だ。東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)が運転停止に追い込まれ、同県が07年度に約29億5000万円と見込んでいた核燃料税はゼロになってしまった。もっとも、東電が同年12月、震災復興の名目で同県に寄付した30億円は、失われた税額にほぼ相当する額だったが……

 近年は財政難を背景に、核燃料税の税率アップが全国で相次ぐ。福井県も当初の5%から3度にわたり税率を引き上げてきた。来年11月には更新期を迎えるが、県は引き上げの可能性を否定しない。

 国に認められる必要があるとはいえ、税率のさじ加減は各自治体次第。原子力政策における自治体の発言力増大を象徴するかのようだ。

 ある電力事業者の従業員がつぶやく。「これ以上の税率アップは、もう勘弁してほしい」(敬称略)

 <法定外普通税>法律の定めがない地方自治体独自の税のうち、使い道が自由なもの。創設には、総務大臣の同意が必要。「石油価格調整税」(沖縄県)「別荘等所有税」(静岡県熱海市)などがある。核燃料税は昨年4月時点で、11道県が導入している。

読売新聞 2010年3月13日 (引用)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukui/feature/fukui1267715720334_02/news/20100313-OYT8T00917.htm

0 件のコメント: