2011年5月22日日曜日

銀行の役員報酬を凍結させた、オランダのピープル・パワー

オブザーバー(UK)より NETHERLANDS

 公的資金で救済されたのに、巨額のボーナスが支給される。そんな銀行に抗議し、預金者が前代未聞の行動に出た。

 アムステルダムを本拠とするING銀行は、世界第20位に入るオランダの金融大手。2008年に政府から100億ユーロ(約1兆2000億円)の資金注入を受け、経営破綻を免れた。それでも役員に賞与が支払われることが明らかになり、オランダ国民は怒りを爆発させた。

 INGの顧客は、同行の役員報酬に抗議するため、ツイッターなどのソーシャルメディアで動員をかけた。集団で、INGから一斉に預金を引き出そうというのだ。預金者が銀行を脅すという事態に、政府は恐れをなした。

 もちろん、米英の金融機関に比べれば、オランダの賞与など微々たるものだ。INGのヤン・ホメンCEOは100万ポンド(約1億3000万円)の賞与を得ることになっていたが、ゴールドマン・サックスやJPモルガン幹部の賞与額は4000万ポンド程度とされる。それでもオランダ人が激怒したのは、「われわれは小国でも、他に追随するより自らお手本を示すことを重視するからだろう」とING労組のフレッド・ポロウトは言う。

 実際、ホメンの賞与に対する国民の反発はあまりに強かった。数日後、ホメンは自身の賞与受け取りを断り、INGが債務返済を終えるまで役員にも賞与を支給しないと約束した。

 ING内部の人の弁では、このときのオランダは「この国特有のルター派、カルヴァン派的な反発」に支配されていた。過剰な富の所有は道徳上非難に値し、オランダ伝統のキリスト教的価値観に反する、という考えかただ。

「閣僚はストックオプションをののしり、『銀行は自己顕示欲が強い、国家を犠牲にしてまで儲けようとしている』と非難したのです」

 世論は、公的支援を受けた銀行は賞与を支給すべきではない、との見かたで一致している。オランダ国会では、遡及して役員賞与を返還させる案も出ている。INGは昨年、30億ユーロの純利益をあげたが、依然納税者に50億ユーロの債務を負っているのだ。

 この流れを生んだのは、納税者による脅しだったことは言うまでもない。


World Biz News 2011年05月21日(引用)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/3257

今後もしも政府が国民を犠牲にして、銀行と東電の株主救済を優先するとしたら、日本でも同じことが起こりえるのだろうか?
日本の銀行は、こんなことは起こり得ないとタカをくくっているだろうが、どうなのだろう。


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