東京電力は26日、今月20日に発表した2011年3月期の連結決算について、監査法人から、福島第一原子力発電所の事故に伴う賠償額が不透明で、賠償の枠組みも今後の検討を要することなどから、今後の経営にリスクがあるとの指摘を受けていたことを明らかにした。
監査法人は25日に監査報告書を出していた。
監査法人は、決算自体は適正という意見を表明したが、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している」と指摘した。
東電は決算で、金融機関を除く日本企業としては最大となる1兆2473億円の税引き後利益の赤字を計上した。
読売新聞 2011年5月26日11時20分 (引用)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110526-OYT1T00415.htm
公認会計士としては、最も無難な監査報告書ということだな。
「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している」を付けるか付けないかで、普通の会社なら揉めるところだけれども、今回はどうだったのか。探るのが怖いネタだ。
今回の決算では、福島原発の廃炉費用で1兆円の特別損失なので、当期純損失はおよそ8,000億円という見通しだ。東電の平成22年12月の第三四半期末での連結株主資本は3兆175億円だから、今回の決算では2兆円の株主資本が連結貸借表に計上されるということだ。また1兆8,812億あった連結利益剰余金も1兆円以上ある。
5月の初め頃に東電は、政府に対して財政支援を要請していたが、もしもそれほど財政困難なのだとしたら、震災後の決算で1兆円を超える利益余剰金を計上出来るのは余りにも不自然だ。
「お金があるのに無いので助けてちょんまげ」なんてことは会計理論上どう考えても両立が不可能だから。
平成23年3月期決算では、通常の事業損益計算とは別に、資産減損、原発廃炉、損害賠償の3つの特別損失の計上があるわけだから、これまでの公表財務諸表と公開資料に基づいて考えると、資産減損が7,000億、原発廃炉が2兆4千億、損害賠償が1兆6000億なので、平成23年3月期末の貸借対照表の実態はスーパー債務超過になっているはずである。
これはあくまでも想像だけれども、今回の決算では、税効果資産だとかの資産減損をメインとして廃炉費用は原発事故が無い場合の平常廃炉計算を使い、損害賠償を仮払の500億円だけ計上したということだと思う。
でも新日本監査法人だって馬鹿じゃないから「継続企業の前提に疑義」という企業が嫌うレッテルを貼らせて貰うという条件で、今回の「スーパーグレー、もちろん責任は取れまっしぇーん監査報告書」の発表に至ったのであろう。
いずれにせよ今回の様なケースでは、負債に対する見積もりを合理的にすることは不可能だし、会計原則に則ったということを強調する変ちくりんということだ。
監査法人の会社法上の監査意見の期限は5月末頃で、金融商品取引法上の期限は6月末だ。
最悪の場合には、監査意見の公表を延ばす可能性もあると思う。
監査担当の皆さん、無意味な徹夜作業お疲れ様でございます。がっぽり請求して稼いでください。
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