現職の警部が、捜査対象に天下っている警察OBに捜査資料を流す。品川美容外科の業務上過失致死を巡る情報漏洩事件は、警察のモラル低下を改めて印象づけた。だが、事件にはもう一つ別の側面があると警視庁詰め記者が語る。
「逮捕された元警視庁警部の中道宜昭(53歳)は、警察情報を集めるために品川美容外科に雇われた男で、言ってみればタカリ屋。でも、この男のタカリ癖を育んだのはマスコミ、特に民放テレビ局なんです」
中道が捜査一課の刑事だった数年前に繰り広げられた異様な光景を、あるテレビ局記者が明かす。
「近年はガードが堅い刑事が多いなか、中道は接待をすれば見返りをくれる貴重な存在だった。千葉の野田市に住んでいて、『中道を警視庁までハイヤーで送り届ける権利』をマスコミ各社が奪い合ったんです。家に一番乗りすればいいと、各社朝の3時には常磐道をひた走って野田に向かった。ハイヤー同士がかち合い、カーチェイスになることもあったそうです」
それだけではない。中道の「求愛活動」にもテレビ局は協力した。
「奥さんとは別居状態で、野田にあるスナックのママに入れあげていた。よく一緒に行ってカネを払わされました。資金力のある社は銀座の高級寿司屋でも接待していた。ここまで食い込める刑事はなかなかいないので、各社の接待競争が激化したのですが、さすがに癒着しすぎと判断した一部新聞社で『これ以上中道と付き合うな』とお達しが出たほど。彼を接待モンスターにしたのは、我々にも責任があるんです」(前出のテレビ局記者)
なかでも噂になっていたのがTBS。中道の息子は同社の社員である。上智に通っていた息子の就職が決まった時、中道はたいそう喜び、TBSとの親密度がいっそう高まったという。
今回、テレビ各局は「警察と医療機関の癒着体質」と訳知り顔で事件を報じたが、その裏で、自分たちもこのお喋り刑事にせっせと貢いでいたわけである。
週刊現代 2011年8月13日号
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/14590
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