2011年8月18日木曜日

アサヒHD NZインディペンデント・リカーを約976億円で買収 海外展開を加速

アサヒグループホールディングス <2502.T> は18日、ニュージーランドの酒類大手、インディペンデント・リカーを買収することで合意したと発表した。
買収価格は約15億2500万ニュージーランドドル(約976億円)で同社の買収案件としては過去最大。
国内のビール市場が縮小する中で、安定的な成長が期待されるオセアニア地域の基盤を拡大し、将来の成長をけん引する海外事業の展開を加速させる狙い。

アサヒは、インディペンデント・リカーの持ち株会社であるフレイバード・ビバレッジズ・グループ・ホールディングス(FB)の株式を保有する投資ファンド、ユニタス・キャピタル、パシフィック・エクイティ・パートナーズなどからすべての株式を取得する。
株式取得は9月末の予定。最終的な買収価格は運転資本や有利子負債を調整した金額となる。

インディペンデント・リカーはARTD(Alcoholic Ready-to-Drink)と称される、栓を開けてそのまま飲むスタイルの低アルコール飲料の市場で、ニュージーランドにおける販売数量が1位、オーストラリアでは3位。
FBの連結純売上高は3億7980万NZドル(約243億円、2010年9月期)。
FBの買収により、アサヒはニュージーランドやオーストラリアなどオセアニア地域における酒類事業の新たな基盤を確保する。

アサヒの泉谷直木社長は、買収の理由として「相対的にリスクが低く、安定的な成長を見込めるオセアニア市場自体の魅力が一因」と語った。
さらにインディペンデントが女性や若者に人気ナンバーワンのRTD商品を持つなど、強いブランド力を持つことや、生産・物流・営業拠点など酒類ビジネスのバリューチェーン機能を一式保有していることも買収を決めた要因、と説明した。

アサヒは今月に入り、豪州飲料販売数量シェア3位のピー・アンド・エヌ・ビバレッジズ・オーストラリア社(P&N社)のミネラルウォーター類・果汁飲料事業の取得がACCC(オーストラリア競争消費者委員会)で承認されたほか、ニュージーランド飲料シェア5位のチャーリーズグループ社(チャーリーズ社)の株式公開買い付け(TOB)も成立。
今回のインディペンデント買収で、オセアニア地域のネットワークが急速に拡大する。
泉谷社長は「(グループ各社が)商品面やインフラ面で補完できるほか、より効率的な事業展開やシナジーを見込める」としており、アサヒの飲料事業との協業も進める方針を示した。
同社長は「今回の買収でオセアニアについては一応の節目に来た。今後はこれらのネットワークを使い、どう成長させるかというフェーズに移る」と述べた。

今回の買収案件におけるアサヒのファイナンシャル・アドバイザーは野村証券とロスチャイルド、ファンド2社のアドバイザーはUBS。
買収資金については「若干の手元資金と借入金で賄う予定で、日本の金融機関からの借り入れを予定している」(アサヒ幹部)。
泉谷社長によると、今回の案件では「IRRで10%以上、投資回収期間は15年以内をメドに計画している」。
買収金額について同社長は「今後の成長性を考慮すれば、十分元を取れるとみており、決して割高とは思っていない」と述べた。

<海外戦略、次は東南アジア>
アサヒは長期ビジョンの中で、2015年の連結売上高を2兆─2.5兆円に拡大させ、海外事業の売上高比率を20─30%に引き上げることを打ち出している。
2010年の海外売上高比率は6.6%にとどまっており、海外事業の拡充が急務となっている。
今回の買収で、同比率は10%程度に上昇するが、目標達成にはさらなる積み上げが必要。
泉谷社長は「海外は中国に続き、オセアニアで充実したネットワークを構築できた。次の課題は東南アジアのネットワークの形成」と指摘した。
また、その他の地域でも「優良案件があれば考えて行く」と述べた。
円高の影響については「瞬間的には(海外企業の買収に)プラスだが、いい案件があればスピードを上げて取り組もうとしてきた中で、案件を決めた時、たまたま円高だったということ。
円高だから早くやろうというわけではない」と語った。

同社は今年初めに、M&A(合併・買収)関連で2012年までに4000億円、2015年までに8000億円が投資可能との認識を示していた。
11年12月期は国際事業で初の営業黒字化を見込んでいる。
 
ロイターニュース 2011/8/18 12:32

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