2011年8月8日月曜日

コメ先物・「価格指標」定着道険しく

試験上場したコメ先物の取引初日は、東京穀物商品取引所で初値が付かないなど波乱の幕開けとなった、価格形成の透明化を目指す中で、本来の機能を確認できなかったため、取引所関係者が真価を見極める機会は持ち越された格好だ。2年間の試験上場を経て判断される本上場の可否については、市場参加者が増え、活発な取引が行われるかがカギとなる。流通米の6割を扱うJA(農協)グループは取引に参加しない姿勢を崩しておらず、「コメの価格指標」定着に向けた厳しい挑戦が続く。

東穀取の渡辺好明社長は8日の会見で「透明性のある価格形成につながるコメ先物の上場は、我々の念願だった」と強調した。

もともと、先物取引は江戸時代の大坂に開設された堂島米会所がルーツだ。発足は世界最大のシカゴ商品取引所よりも120年早い。コメ先物取引所が昭和14年に廃止されて以来、試験上場ながら72年ぶりの復活とあって、関係者の感慨は大きかった。

コメ先物取引の特徴は、損失を抱える危険性を減らすことにある。

例えば卸業者があらかじめコメの現物6トンを1俵(60キロ)当たり1万5000円、計150万円で仕入れる契約を農家と結んだとする。ところが収穫期に米価が1俵当たり1万円に下落すれば、卸業者はこのコメを100万円でしか売れず、仕入れ価格との差である50万円の損失を抱える。

しかし、先物市場ではあらかじめ売り注文が出せる。収穫期に6トンを148万円で売る契約をしておけば、収穫期には100万円で買い戻すことでこの市場で48万円を得られる。現物の50万円の損をしても、実際には差し引きで損失を2万円に抑えられる。

こうした機能は「ヘッジ(保険つなぎ)」と言われ、値上がり時にも卸業者や食品メーカーはあらかじめ決めた価格と取引量でコメを調達できる。放射能汚染による供給減で、平成23年産米の価格が上昇する可能性が指摘されており、関係者がリスク回避に利用することも考えられる。

ただ、取引が少なく、売買が思うように成立させられなければ、こうした真価を発揮できない。「マネーゲーム」(茂木守会長)とコメ先物を批判してきた全国農業協同組合中央会(JA全中)は8日、「取引が成立しなかったのは、(参加者が)供給不足を先読みした結果で、現物価格とはかけ離れた動き」と批判しており、活性化への道は今後も険しくなりそうだ。

産経ニュース 2011.8.8 (引用)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110808/biz11080822160042-n1.htm

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