2011年9月24日土曜日

今なお続く大手メディアの“不誠実”な報道に対する不信

 東京電力福島第一原発事故による大手メディアへの報道不信が極まっている。

それも当然のことだろう。ここまで一貫して「原発事故」を象徴とする事件・事故の真相の情報隠蔽に加担してしまっては、読者や視聴者にも気づかれるというものだ。

だからといって、筆者は、新聞・テレビを全否定するつもりはない。それはこれまでと同じ姿勢だ。

たとえば、東京新聞の社説や「こちら特報部」、あるいはNHKのストレートニュースなどのように、誠実な報道を繰り返している大手メディアも少なくない。

だが、それでも、読者や視聴者の立場からすれば、不誠実と思われる報道が続いている。それはまた、比較的気づかないような形でこっそりと報じられることが少なくない。きょうの読売新聞の次のベタ記事などまさしくその好例である。

一見何の変哲もないベタ記事の
“不誠実”な点とは


韓国、福島を除く被災3県への渡航制限を解除

【ソウル=中川孝之】韓国外交通商省は20日、東日本大震災で、福島、宮城、岩手、茨城の4県に出していた渡航制限について、21日から、福島県を除きすべて解除すると発表した。

同省は、福島を除く3県は、余震が減り福島第一原発事故の影響もほとんどない、と解除理由を説明している〉(2011年9月20日22時32分 読売新聞)

この小さな記事がなぜ不誠実なのか。それは、最初の前提となる情報が欠落しているからだ。

最初の情報というのは、〈日本への渡航制限が行われていた〉というニュースを指す。事故発生当初の3月、韓国政府が東北4県に渡航制限を出していたというニュースを記憶している読者はほとんどいないだろう。それも当然だ。実際、海外政府による日本への渡航制限、渡航禁止、あるいは当初は避難勧告、避難命令を、曖昧か、あるいはほとんど報じてこなかったからだ。

その結果、原発事故を起こした日本が、海外からどのように見られているかもわからないことになった。だが、情報を売っている新聞記者や放送記者がまさか、知らなかったとは言わせない。

こんなにあった!
海外政府による日本からの退避勧告


【3月23日現在、原発事故への各国政府の対応。

▽米国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告
チャーター機で約100人が台湾へ退避
外交官らの家族約600人に退避許可
軍人の家族2万人の国外退去を支援

▽英国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告
チャーター機を香港まで運航

▽フランス
出国または東京以南への移動求める
政府機で241人がソウルへ退避
エールフランスに増便を指示

▽イタリア
出国または東京とその以北からの退避勧告
特別航空便の運航を検討

▽スイス
被災地と東京・横浜からの一時退避勧告
チャーター機の運航を検討

▽オーストリア
出国または東京・横浜からの退避勧告

▽スペイン
福島第一原発から120キロ圏外への退避勧告
チャーター機を運航

▽ロシア
輸送機を派遣

▽ベルギー
軍用機を派遣

▽チェコ
軍用機で106人が帰国

▽クロアチア
出国または南部への退避勧告

▽オーストラリア
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告

▽ニュージーランド
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告

▽韓国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告

▽シンガポール
福島第一原発から100キロ圏外への退避勧告

▽フィンランド
東京とその以北からの退避勧告

▽セルビア
出国を勧告

▽イスラエル 
東京周辺から西日本などへの退避勧告

▽ドイツ 
出国または東京・横浜からの退避勧告

▽台湾 
高齢者、子供、女性に出国検討求める】

諸外国の動きを
報じただけで「デマ扱い」


これは、3月の原発事故発生直後、筆者が自らのメルマガで配信した世界各国の避難勧告の様子である。

日付は3月23日現在とあるが、実際は3月15日にはほとんどの国がこうした勧告を出していたのである。

ところが、当時の日本では、世界のこうした動きを報じるだけで「デマ扱い」され、非難の集中砲火を浴びたものだ。その理由はなんといっても、同時期の日本政府の次の発表によるところが大きい。

【▼日本
福島第一原発から20キロ圏外への退避勧告
20~30キロは屋内待避】

そしてまた、記者クラブメディアがこの「安心デマ」「安全デマ」を盛んに報じたものだから、多くの読者や視聴者が真相を知らされないまま、被曝してしまったのである。

筆者が繰り返し言及してきた「犯罪行為」とはこのことだ。

大手メディアはなぜ報じない?
情報次第で賠償請求に変化も


さらに大きな問題は今なお、こうした事実が公表されず、どのメディアも報じないことにある。

その結果、きょうの読売新聞がこっそり報じたニュースのように、読者にしてみれば「おや、そんなことになっていたのか」という記事が繰り返し載ることになるのである。

風評被害賠償金、きょうから仮払い請求受け付け

東京電力の福島第一原発事故で福島、茨城、栃木、群馬県内の観光業者が受けた風評被害の賠償金を国が東電に代わって仮払いするための請求受け付けが21日から始まる。

東電は今月12日から事故被害者への本格的な賠償手続きを開始。21日から法人、個人事業主にも対象を拡大するが、「東電による賠償金を待たずに運転資金が必要」という観光業者には、国が東電に代わって賠償金を仮払いする。文部科学省の発表によると、仮払いの請求書は郵送で受け付ける。宛先は、〒100-8959東京都千代田区霞ヶ関3の2の2「特定原子力損害に係る仮払金請求書 受付窓口」〉(2011年9月21日01時27分 読売新聞)

このニュースは昨日のものだが、たとえば筆者のメルマガの情報と、大手メディアの情報では、観光業者が求める賠償請求の範囲も額も違ってくるのは明白だろう。

各国の避難勧告情報を元に賠償を試算すれば、その範囲は東北のみならず、日本全土に及ぶことになる。

こうした情報は死活問題であるが、日本のメディアの不誠実な報道のおかげでなにも伝わってこないのだ。

繰り返し書こう。新聞・テレビは読者や視聴者のために、いい加減に政府・東電の情報隠蔽に加担するのは止めたらどうだろうか。

Diamond Online 週刊 上杉隆 2011/09/22 (引用)
http://diamond.jp/articles/-/14114


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