2011年9月9日金曜日

九電やらせメール「知事発言が発端」 第三者委

 九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働に向けた県民向け説明会を巡る「やらせメール」問題で、九電の第三者委員会(郷原信郎委員長)は8日、中間報告をまとめ同社に提出した。九電幹部が古川康佐賀県知事との面会後に作成した知事発言のメモはほぼ正確だったと認定、発言がやらせの発端になったと明記した。知事は同日、改めて自身の関与を否定したが、責任を問う声が上がるのは必至だ。

 国主催の佐賀県民向け説明会5日前の6月21日、古川知事は九電の段上守前副社長、諸岡雅俊前取締役(ともに6月末で退任)、大坪潔晴佐賀支店長(現支社長)と面会。大坪氏は面会後、知事発言のメモを作成し、知事から九電への「お願い」として「説明会の際に発電再開容認の立場からもネットを通じて意見や質問を出してほしい」などと記していた。

 第三者委の中間報告はこのメモについて、大坪氏が面会時に手帳に記した内容や関係者からの聞き取り調査を踏まえると、実際に知事が同趣旨の発言をしていたことは「否定しがたい」とした。

 古川知事はこれまで、メモについて「内容や真意は相当違っている」などと批判。九電も真部利応社長が「メモにする段階でニュアンスが少しずつ変わり、知事の要請と受け止める可能性がある文書になった」と述べており、中間報告はこれらの見解と異なる。

 中間報告では、知事の発言がやらせの「発端となった」とも明記。郷原委員長は8日の記者会見で「発言がなければ(やらせメール問題は)おそらく起きなかったのではないか」と述べた。九電側はこれまで「知事の発言がやらせの引き金ではない」などと繰り返し説明しており、第三者委はこれを覆した形だ。

 九電が7月にまとめた社内調査では、再稼働賛成の意見投稿を社内外に依頼したのは課長級社員の判断で、副社長らからの指示は「説明会の周知」だけだったとしていたが、第三者委は「賛成投稿要請を含む趣旨だった」と指摘した。

 一方、第三者委は5月に国が佐賀県幹部向けに開いた原発の安全性を巡る説明会についても調査。説明会は一般にも動画配信し、視聴者がネットを通じて意見投稿できる仕組みだったが、説明会前日に県幹部が大坪氏に、再稼働賛成の意見を九電社員らが投稿するよう求めたことが中間報告で新たに判明。この際、県幹部は「知事の強い希望」と説明したという。

 第三者委は大坪氏が6月の面会時の知事発言について、5月と同じ対応を求めたものだと受け止めたとしている。

 第三者委は9月中に再発防止策なども盛り込んだ最終報告をまとめる。

日本経済新聞 2011/9/9 0:05 (引用)

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